今回は「薬のまとめシリーズ」第1弾。
※薬のまとめシリーズは基本的に自分の薬剤師業務に役立つようにまとめた内容です。薬剤師の方には参考になれば、そしてご指摘があればしていただければ幸いです。
→ご意見・ご指摘はこちらにお願い致します。
※アレルギーや合わない薬のある人は、受診するときや薬を買うときに必ず医師や薬剤師に伝えるようにしてください。
電化製品についている取扱説明書のように、薬にも「添付文書」という説明書がついています。
「添付文書」は薬事法(第52条)に基づいて提供される唯一の法的根拠のある情報源で、処方される薬(医療用医薬品)にはもちろん、自分で買うことのできる一般用医薬品(OTC医薬品)にもついています。
添付文書に記載されている大事な情報の一つが「禁忌(きんき)」です。
禁忌には、その薬を使用してはいけない人が書かれています。その薬を使用(服用)することで病状が悪化したり、副作用が起こりやすくなったり、薬の効果が弱まったりする可能性が高いからです。
OTC医薬品の添付文書ではわかりやすく「してはいけないこと」の項目内に書かれているので、特にアレルギーや合わない薬のある人はよく確認するようにしましょう(外箱にも記載されることになっています)。
表1は、処方される薬(医療用医薬品)で「禁忌」項目に「牛乳アレルギーのある患者」と記載のある薬とその分類・理由のまとめです。
表2は、一般用医薬品(OTC医薬品)で「してはいけないこと」に「牛乳アレルギーのある人」と記載のある薬とその分類・理由のまとめです。
表1 医療用医薬品
分類・成分 | 販売名 | 理由・メモ |
---|---|---|
耐性乳酸菌製剤 ※ビオフェルミンR散・錠、 ラクスパン散、 レベニン散・カプセルは 脱脂粉乳を使用してないのでOK | エンテロノンR散 | 乳酸菌培養段階の培地に脱脂粉乳を使用している 適応:ペニシリン系、セファロスポリン系、 アミノグリコシド系、マクロライド系、ナリジクス酸、 テトラサイクリン系(ラックビーRのみ適応なし) |
耐性乳酸菌散10%「JG」 ※エントモール散から名称変更 | ||
コレポリーR散 | ||
ラックビーR散 | ||
タンニン酸アルブミン | タンニン酸アルブミン | タンニン酸アルブミンは、タンニン酸とタンパク質との化合物であり、 そのタンパク質に乳性カゼインが含まれている 禁忌:細菌性下痢症 併用禁忌:経口鉄剤(併用すると作用減弱) |
タンナルビン | ||
肝不全用経口栄養剤 | アミノレバンEN配合散 | 添加物としてカゼインを含有している |
高血圧狭心症治療剤・ニフェジピン | エマベリンLカプセル | |
制酸剤緩下剤・水酸化マグネシウム | ミルマグ錠 | |
ミデカマイシン(経過措置) | メデマイシンカプセル | |
たん白アミノ酸製剤 | エネーボ配合経腸用液 | 牛乳由来のカゼインを含有している |
エンシュア・リキッド | ||
エンシュア・H | ||
ラコールNF配合経腸用液 | ||
ラコールNF配合経腸用半固形剤 |
表2 OTC医薬品
分類 | リスク区分 | 販売名 | 理由 |
---|---|---|---|
整腸薬 | 第3類医薬品 | アペテート整腸薬NA | コンクビオゼニン(乳酸菌)の製造工程中で使用した 「脱脂粉乳」が残存している |
イストロン整腸錠 | |||
イストロン整腸錠プラス | |||
新アペテート整腸薬 | |||
新笹岡整腸薬M | |||
ファスコン整腸錠 | |||
ファスコン整腸錠プラス | |||
ラクティブプラス | |||
ラクティブプラスNA | |||
止瀉薬 | 第2類医薬品 | グアベリン錠 | 成分として含まれるタンニン酸アルブミンは、 タンニン酸とタンパク質との化合物であり、 そのタンパク質に乳性カゼインが含まれている |
新タントーゼA | |||
新ビスノールカプセル | |||
ストーゼ止瀉薬 | |||
大正下痢止め〈小児用〉 | |||
ビオフェルミン止瀉薬 | |||
ビストップ | |||
ベルランゼットS | |||
婦人薬 | 第2類医薬品 | 婦人華N | 添加物としてカゼインを含有している |
口腔咽喉薬 | なし(指定医薬部外品) | 新プレコールトローチ | 基剤に乳成分を使用している |
新ルルエーストローチ | 添加物に脱脂粉乳を使用している |
2015年8月、乳製品に対して過敏症の既往がある患者にアナフィラキシーが表れた症例があり、抗インフルエンザ薬であるイナビルとリレンザ(いずれも吸入薬)の「使用上の注意」が改訂されました。
理由は、乳蛋白を含む乳糖水和物を使用しているため。「アナフィラキシーがあらわれたとの報告があるので、投与に際しては十分に注意すること」と記載されました。
※「慎重投与」は「禁忌」と異なり、使用してはいけないわけではありません。次の患者には慎重に投与すること、と書かれており、リスクとベネフィットを考慮して用量用法の検討をしたり、使用後の状態を観察する必要があったりする場合に記載されます。
2016年1月現在、「慎重投与」に「乳製品に対して過敏症の既往歴のある患者」と記載ある薬は以下4つだけでした。
・イナビル吸入粉末剤
・ソル・メドロール静注用
・リレンザ
・注射用ソル・メルコート